ブログ

人事評価制度策定の10のステップとそのポイント(前半)

2015.6.15.

人事評価制度は、処遇(昇給・賞与・昇格・昇進・適正配置・・・)決定の手段ですが、本来の
目的は「人材育成・職場の活性化・業績向上」です。

 

特に、人材育成と業績向上は企業にとって永遠のテーマでありその方策も様々ですが、多くの
企業ではこの二つのテーマを同時に実現するための仕掛けやノウハウを持ち合わせていないのが
実情です。

 

このコラムでは、今回と次回の2回に分けて制度構築の手順と概要を、上記の二つのテーマの
観点から整理しました。
人事評価制度(評価・賃金・目標管理)の策定手順は以下の通りです。

 

【ステップ1】~人事戦略の明確化

【ステップ2】~現行制度の課題整理

【ステップ3】~人事評価制度の骨子作成

【ステップ4】~資格制度と評価制度の策定

【ステップ5】~賃金(報酬)制度の策定

【ステップ6】~人事制度の枠を超えた諸課題の洗い出し・検討

【ステップ7】~目標管理制度の策定

【ステップ8】~規程・マニュアルの整備

【ステップ9】~全体の見直し

【ステップ10】~社内体制作りと試験的運用の実施

 

ステップ1・2・3は新制度の方針、狙い、現状の課題と改善の方向性などと共に、全体概要を
整理するステップです。
ただ単に全体概要を整理するということではなく、自社の根本課題を正しく認識できることが
大切です。

 

ステップ4・5・6・7は制度の詳細設計ですが、ステップ6は特に人材育成と業業績向上の
仕組みを検討するステップとなっています。

 

それでは、各ステップの概要についてご紹介いたします。

 

【ステップ1】~人事戦略の明確化

 

一般的な制度を作っても意味がありません。
制度策定の本当の目的は「人材育成・職場活性化・業績向上」です。
従って、

 

①経営計画(経営目標)の確認
②人材育成の方針の確認
③現状人材と実現したい人材像のギャップ並びに改善課題の整理

 

などの実施により、人材育成のための具体的な戦略と重点改善事項をきちんと確認・整理した
上でこれらを制度に反映させる必要があります。

 

【ステップ2】~現行制度の課題整理

 

現行の制度内容そのものの課題と共に、社員の浸透度・満足度(不満足度)、更には人材育成や
業績への貢献度などといった運用面に関しての現状分析を行うステップで、以下の事項について
確認します。

 

①現行の制度内容・運用方法の課題確認
②現行制度の人材育成貢献度・業績貢献度の確認
③人事制度・組織風土診断の実施・・・など

 

【ステップ3】~人事評価制度の骨子作成

 

上記のステップ1・2を踏まえて、新人事制度の骨子を作成するステップです。
会社の戦略課題、部門別・階層別の人材課題と重点改善事項、制度(含む運用面)の現状、
人事・組織風土診断結果などを踏まえて、

 

①新たな評価・賃金・目標管理制度並びに運用方法の概要の整理
②人事評価制度と人材育成・業績向上の因果関係とその実現プロセスの整理

 

などを実施します。

 

例えば、人材課題の整理、現状制度とあるべき制度のギャップと改善策、評価制度における部門
別・階層別の重点評価要素(評価項目)と期待レベル、新賃金体系、評価と賃金のインター
フェイス、目標管理の考え方と適用範囲などなどを整理した上で、新制度の構築・運用がなぜ
人材育成や業績向上に結びつくのか、また、その実現プロセスを整理します。

 

【ステップ4】~資格制度と評価制度の策定

 

制度骨子(ステップ3)の資格制度と評価制度の部分を詳細に設計するステップです。

 

資格制度(職能資格制度の場合)は、一言で言うと社員のステップアップ(能力=人材育成)の
プロセスを整理したもので、特に、社員の能力の発展段階を節目節目で区分けし、その段階
(等級)毎に会社が求める能力の内容・水準を整理したものを「等級別能力要件」といいます。

 

尚、この資格制度には、社員の能力をベースにした職能資格制度の他に、仕事や役割をベースに
した資格制度があります。

 

傾向としては仕事や役割をベースにした資格制度を採用する企業が多くなりつつありますが、
まだまだ圧倒的に職能資格制度を採用している企業が多いのが実態です。

 

評価制度は、「評価項目、評価項目定義、評価の着眼点、ウェイト、評価点毎の基準(例えば、
5段階評価ならば1~5のそれぞれの内容)」などを検討・整理し、評価シートとして作成
します。尚その際には、下記の3つの要件を考慮した上で設定していきます。

 

■評価項目は、自社の経営課題や人材育成課題が反映したものであること。
そして、「成果の実現度(結果に対する評価)・業務の遂行度(プロセスに
対する評価)・能力の啓発度(可能性に対する評価)」といった3つの観点
から設定されていること。

 

■評価基準は絶対評価が可能であり、また、会社としての期待水準が明示さ
れていること。またその際、「できる・できない」で評価を行うのではなく、
「できたか・できなかったか」、すなわち「発揮能力」での評価が可能な
基準とすること。

 

■評価項目や基準から、社員本人の現状とレベルアップ目標が自覚でき、
具体的な改善テーマがイメージできること。

 

以上の3要件を考慮しつつ、下記の検討・整理を行います。

 

①階層別・部門別の当該業務の「遂行ポイント・必要能力・成果」の洗い出し
②評価項目の選定と定義付け・基準作り
③評価基準書(評価シート)の作成 ・・・など

 

尚、評価シートは階層別・部門別に作成しますが、その理由は、各階層や部門によって会社と
しての期待事項が、「成果の実現度・業務の遂行度・能力の啓発度」共に異なるためです。

 

因みにこの評価シートは、期末・年度末の評価(考課)のためのツールといった側面と共に、
会社として改善・強化してほしい社員の能力・行動基準を表したものなので、日々の業務遂行に
おけるOJTツールとして、また、後々の各種の人材育成施策の基本として活用します。

 

【ステップ5】~賃金(報酬)制度の策定

 

このステップでは、賃金(報酬)の体系・構成要素と比率・賃金テーブルなどを整備・策定しま
すが、大切なことは評価制度との連動です。

 

評価結果をどのように賃金(報酬)に反映させるか・・・、例えば、評価結果に応じた昇給額は、
階層や資格等級毎にアップ率(額)を工夫する必要があるし、ケースによっては減額もあり得ま
す。

 

因みにこれらは、どのような賃金要素(職能給・職務給・業績給・年俸制・年功給など)を選択
するかによっても左右されます。

 

そしてまた、昇給原資の配分の問題もあります。

 

更に、売上・利益計画との関係で人件費をどの程度確保すべきなのか、どう管理していくのかと
いった人件費総額管理の仕組みの整備も重要です。

 

その他にも重要な検討事項は様々ありますが、このステップでは下記のような事項について
検討・整備していきます。

 

①賃金体系、賃金構成、賃金形態の整理
②賃金支給方法の整理と評価との連動方法の整理
③昇進、昇格基準の整理
④評価パターン別の賃金シミュレーションの実施
⑤現行賃金と新制度賃金の対比と是正方法の整理
⑥人件費総額管理方法の検討・・・など

 

ステップ6以降は次回ご紹介します。

 

 

お問い合わせ

お問い合わせはこちら

04-7169-1711

  • お悩み解決のヒント(その1)
  • お悩み解決のヒント(その2)
  • お悩み解決のヒント(その3)
  • 経営者ブログ