2016.9.2.
■「三遊間のゴロを取る人材を育てたい」・・・これはある会社の社長の言葉です。
野球の三遊間とはサードとショートの間のことで、ここに飛んできた打球はサード
かショートのどちらかが処理しなければなりません。しかし、どちらが処理する
べきかは明確ではありません。
譲り合いの精神は日本人の美徳?なのかもしれませんが、だからと言って「自分の
守備範囲ではない。取りに行くのはやめよう」では失点にもつながりかねません。
場合によってはそのゲームに負けてしまうかもしれません。
これは三遊間だけでなく二遊間、右中間、左中間なども同じです。
野球にはそれぞれのポジションの守備範囲がはっきりしているようではっきりして
いないところがあるのです。
各選手の力量もさることながら、その時々のゲームの流れや場面によって自分が
処理する守備範囲はまるで変わってくるのです。
■そしてこれは人事評価制度も全く同じです。
「自分で自分の限界を勝手に決めつけて、これ以上はできない、やらない」、
「やることを最初から限定して、それ以上はできない、他者がやることだ」・・・、
これでは自分も会社も成長できるわけがありません。
会社の業績にも悪影響が出るでしょう。また、自分自身で更なる高みを目指す
こともできませんし、極論ですが幸せな人生を送ることすらできません。
また、私たちの仕事には自分の責任担当業務というものがありますが、その時々の
個別の事情(例えば、その業務の背景や経緯、利害関係、緊急度、その他諸々の
制約条件など)によって、業務の範囲も役割もアウトプットも変わってきます。
ですから、求められるスキルも仕事ぶりもこれらの事情によって変わってくるの
です。当然ですが評価にも影響を及ぼします。
もちろん、会社が期待しているスキルを習得し、キチンとした仕事ぶりが実践でき
ればそれに越したことはないのでしょうが・・・。
でも、そもそも会社が期待する「スキル・仕事ぶり」とは一体何なのでしょうか。
そして、「スキルの習得度合」や「キチンとした仕事ぶり」とはどのようなもので、
どのように判定(評価)すればよいのでしょうか。実に、あいまいというか
モヤモヤッとしています。
人事評価制度では能力要件表や評価基準書などでこれらを定義付けていますが、
どんなに細かく定義付けてもこのような漠然としたあいまいさは拭い去ることが
できません。
それに、所詮「人が人を評価する」ものですから、感情や好き嫌いや意見の食い違い
などを完全に排除することもできません。モヤモヤ感はますます増幅してしまいそう
です。
モヤモヤッとしたものだからこそ、より良い制度を作って、人の知恵と信頼で制度
を運用し、そして「三遊間のゴロを取る」意識で仕事に挑むことが大切なのではない
でしょうか。