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絶対評価と相対評価はどちらが良いか?

2015.7.18.

人事評価の評価方法として大きく大別しますと「絶対評価」と「相対評価」がありますが、
果たしてどちらが良いのでしょうか?

 

もちろん、自社内の様々な事情や人材育成の現状や方針などによって異なりますので、
断定することはできませんが・・・。

 

絶対評価と相対評価の違いや長所・短所をご紹介する前に、ある企業の社長から受けた
ご相談内容についてご紹介したいと思います。

 

以下のような二つのご相談がありました。

 

①現在当社の人事制度は、絶対評価をベースに評価を実施しているが、評価者(上司)の
評価にバラツキが生じており、部門間での評価に相当な格差が生じている。社内で評価
者訓練なども実施してきたがほとんど改善されない。このままだと、社員のモチベーシ
ョンもどんどん低下してしまう。

 

②絶対評価といっても、例えば、技術部門の一般層の評価を例にとると、入社1年目の
社員もいるし10年選手もいる。「技術(一般層)」としての評価シートで評価を行っ
ているが、そこで求めているレベルは、入社1年目の社員と10年目の社員ではハード
ル(難易度)が明らかに違う。また、担当している業務をベースに評価を行うと、入社
1年目(経験の少ない社員)の社員は4や5といった高評価はほとんど困難であり、
モチベーションに問題が生じている。

 

とのこと。大変厄介な問題です。

 

ちなみに、ご相談企業の社長は、「・・・このような問題があり、運用も難しい、時間も
取れない。いっそのこと、相対評価に変えようとも考えている」とのこと。

 

しかしこれには、私は反対しました。一般的にどちらが望ましいか断定的なことは言えま
せんが、この会社の場合、3年前に人事制度の抜本的な見直しをされていたのです。

 

会社の戦略や人材課題をそれなりに反映した制度を策定され、絶対評価方式の元に賃金制
度や昇格制度も運用されていました。

 

また、ご相談のような課題はあるものの、3年前に策定された制度は定着しつつある状況
です。

 

また何よりも、人材育成の基本として「自社内のみで通用する人材を育成するのではなく、
広く社会に通用する人材を育成することで、社員の本当の意味での自己実現を図ってほし
い」とのこと。

 

このような状況を踏まえると、絶対評価方式が好ましいことは明白です。

 

後は、正しい評価者訓練、日々の運用の仕組みの整備、評価事例の共有化、更には他の諸
制度との連動などを通じて、人事制度をもっともっと価値あるものにしていけばよいので
す。

 

 

≪「絶対評価」と「相対評価」はどちらが良いのか?≫

 

絶対評価とは「“絶対的”な評価基準」がある評価ですが、厳密に言うとこれは現実的に
はほとんどあり得ないのではないでしょうか。

 

「絶対評価“方式”」といった方が実態をあらわしていると思います。
絶対評価方式とは、個々の人材レベルに応じてその基準が変わることなく、その仕事ぶり
のレベル(会社の期待水準)が明確に決まっている評価です。

 

但し、完璧な絶対評価ではありません。多くの場合は文章でその仕事ぶりを表しますので
あいまいさは残ります。

 

しかし、いずれにしてもある社員を評価するにあたって、他の社員の成績に影響すること
なく、整理された会社が求める期待水準をベースに当該社員の仕事ぶり・成果を評価しよ
うとするものです。

 

尚、評価要素群としては、達成度評価とその他(能力・行動・情意評価など)に分けられ
ます。

 

◎達成度評価

 

~代表的なものとして、売上、利益、コストダウンなどがあり、その評価は、金額・

比率・件数などで表します。

 

◎その他

 

~代表的なものとして、計画・企画・分析・指導力などの能力評価、業務処理・実行・
リーダシップなどの行動評価、規律・協調・意欲などの情意評価があります。
ちなみに、能力評価と行動評価はほとんど同義とみなして捉えた方が現実的でしょう。
一方で、相対評価とは、文字通り相対的な評価であり、評価結果が当該組織のどのあたり
の位置にあるかで評価しようとするものです。

 

例えば、5段階評価の場合、全体の10%が5の評価、15%が4の評価、40%が3の
評価・・・などと、ある一定の割合で分布を描くような評価の方法です。
それでは、この二つの評価方式にはどのような長所・短所があるのでしょうか。
様々な長所・短所がありますが、ここではひとつふたつ程度に絞って整理しますと、

 

◎絶対評価の長所

 

~会社の経営戦略・目的の実現に向けて、期待する人材レベルを明確にすることができ
るので、社員にとって自己成長目標が明確になり、またモチベーションアップや組織
の活性化につながる。

 

◎絶対評価の短所

 

~評価が難しい(但し、必ずしも評価が難しいとは言えません。評価者のマネジメント
スキルの問題として捉えた方がよいと思います)。評価者の価値観やレベルに応じて
バラツキ(特に、能力・行動・情意評価)が生じてしまい、社員のモチベーション
ダウンの危惧がある。

 

◎相対評価の長所

 

~人件費総額管理が容易である。ある種の納得感が得られやすい。競争意識が醸成され
る(これは短所にもなります。組織風土が影響してきます。好ましい運用が求められ
ます)

 

◎相対評価の短所

 

~社内での順位付けとなり、本来の成果を上げなくても相対的に高い評価を得ることが
できてしまう。逆に、本来の成果を上げても相対的に低い評価しか得られないことも
ある。現状に安住しスキルアップ意欲の減退やモチベーションダウンを招いてしまう。
などが上げられます。

 

もちろん、これ以外にも様々な長所・短所がありますが、大切なことは、どちらを選択す
るにしても「運用」がとても大切になります。

 

中長期と短期の両方の視点で人材育成の方針や進め方を明示し、その上で社員の責任担当
業務のきめ細かいサポートを「運用」を通じて実行することが大切です。

 

ちなみに、弊社がサポートさせて頂いている企業様に対しては、特別な事情がある場合を
除いて「絶対評価」方式をお勧めしています。

 

何故かというと、繰り返しになりますが、会社の戦略や人材課題を反映させることができ、
会社の求める人材像を明確に示すことができるからです。
(例えば・・・人事評価制度の目的は、人件費管理の容易さではなく、あくまでも人材育
成だということです)

 

もちろん、いくつかの短所がありますが、これらは運用や体制の仕組みの中で解決すべき
ものであり、また、社内管理水準の向上などにもつながるからです。

 

そして何よりも大切な視点は、人事評価制度は単なる評価のための制度ではないというこ
とです。
人材育成と会社の付加価値向上に向けた制度なのです・・・・・。

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