2017.3.12.
●前回からの続きです。管理者の存在意義には3つの視点があります。
① 経営者から見た管理者の存在意義
② 部下から見た管理者の存在意義
③ 自分自身から見た管理者の存在意義
詳細は前回コラムをご確認下さい。
●管理者としての意義(価値)をこのように定義付け、3つの存在意義の最大化
を自社の管理者に求めるならば、選定すべき評価項目や期待要件は今までとは
まるで変わったものになるはずです。
●下記は他社事例です。
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≪情報処理A社の場合≫
~「責任感」「チームワーク」「積極性」といった評価項目を廃止し、新たに
「戦略の実践度」と「付加価値業務の見極め」といった評価項目を設定。
旧評価制度での「責任感」「チームワーク」「積極性」の評価項目の定義は下記
の通りであり、この定義に則って基準を5段階に展開(5段階展開は割愛)して
いた。
・責任感 ~自己の担当業務において、どのような困難が生じようとも
決してあきらめることなく最後までやり抜いた。
・チームワーク~自己の意見や都合に固執せずに、常にチーム全体の生産性を
意識した最善の方法・手段で仕事を行っていた。
・積極性 ~困難な仕事や未経験の仕事にも積極的にチャレンジし自発的
に取り組んだ。
新評価制度ではこれらを廃止し、新たに「戦略の実現度」「付加価値業務の見極め」
を下記の通り設定。
・戦略の実践度~会社の戦略と自分の担当業務で実現すべきアウトプットの関係
を整理した上で、当該アウトプット実現に向けて主体的に取り
組んだ。
・付加価値業務の見極め~自分の担当業務の優先順位を、チーム全体の付加価値
といった観点から適切に見極めることができていた。
※実際の定義はもう少し詳細に整理され、また、5段階基準も整理されています。
ここでは意図が損なわれない程度に編集しています。
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●責任感、チームワーク、積極性といった評価項目はとても大切な項目ですが、
執務全般に対する態度・マインドに関する評価項目であり、本来の意図や基準
が抽象的になりがちで評価結果にもバラツキが生じやすいといった課題が
あります。
●従ってこれを廃止し、新たに「戦略の実践度」と「付加価値業務見極め」と
いった評価項目を設定されたわけですが、これはA社の経営課題や人材課題と
表裏一体となった評価項目であると共に、「管理者の存在意義の向上」をとても
色濃く反映した評価項目です。
●評価基準の展開は割愛していますので理解しづらい部分もあるかもしれません
が、
●例えば、「戦略の実践度」は、会社戦略を正しく共有すること、会社戦略と自己
の業務を関連付けること、アウトプット実現に向けて遂行プロセスを整理する
こと、主体的な行動を起こすことなどが前提です。
●また、「付加価値業務の見極め」では、自分が管理者として本来やるべき業務も
含めて業務のたな卸しを実施すること、付加価値業務や付加価値準備業務を
整理すること、プライオリティ管理を行うことなどが前提です。
●また、管理者として本来やるべき業務とは、部門生産性や部門管理などと共に、
当然ですが部下の育成も含まれます。
●ですから、これらの評価項目の意図や狙いを十分に理解し業務を遂行すること
ができれば、管理者としての存在意義は大いに高まります。
●しかし、個々の管理者が正しく意図や狙いを理解したとしても、それで本当に
期待通りの仕事ができるのでしょうか。
「頑張れ」の掛け声だけでは成果は出ません。やはり、会社としてのサポート
(仕組み)が必要です。
●実は、A社は評価項目の変更に先立って「管理者の存在意義」についてかなり
議論されています。
そしてその上で、会社戦略共有のための勉強会や社長による管理者の活動状況
レビューなどを仕組みとして整備されています。
●また、管理者の業務生産性を「自己業務の生産性、部門業務の生産性、部下育成
生産性(育成状況の指標化)」といった視点で具体的に判定できる仕組みを整備
され実践されています。・・・・・
●どのような発想・視点でも、評価制度で求めるものは人材育成や業績向上なの
ですが、管理者の存在意義といった観点から考えると、また一味違った評価項目
が見えてきます。
・・・【補足】・・・
人事評価基準書(評価シート)を作成後にあらためて振り返ってみると、求めてい
るものがハイレベルでなかなか実現できそうにないとか、当社の実態とかけ離れた
ものになっている、ということがよくあります。
この場合、原点に立ち返って見直しが必要ですが、一方で、実際の業務に当てはめ
様々なケースや実例での検証や更にはベンチマーキングによる検証などで、これら
の問題が解消される場合も多々あります。
上記A社事例の場合も、「戦略の実践度」や「付加価値業務の見極め」の基準を活
字として読むとかなりハイレベルな内容ですが、上記のような検証や評価者トレー
ニングにより解消されています。
誤解を恐れずに言いますと、理想とする「あるべき仕事の進め方」を評価制度で整
理した後に、それに現状の仕事の進め方を改めるといった発想も必要なのではない
でしょうか・・・。